いもいもなにいも

おいものなんでもない日

たるんだ糸電話

また今度、またいつか、そのうちに。果たされなかった、果たす気も大してなかったのだろう約束が足元に落ちているのに気付くたび、ひとつずつ拾い上げて、眺めて、破いて捨てる。そのたび、破く私の手にも傷が付く。いまいましいな。まとめて燃やしてしまおうか。それができるならはじめからそうしているけど。

この桃の果肉入りのお酒、ひとりでいつ飲もう。願掛けみたいに棚にしまいっぱなしだった缶詰の栗鹿の子、たしかそろそろ食べなくちゃ。今度会ったらあげようと無邪気に思ってたお土産、仕舞い込んだままだけど捨てなくちゃ。

全部後回しにしてたから、まとめて襲いかかってくるようで、立ちすくむ。やっぱり無理矢理元気溌剌ぶってる時に勢いでどうにかしとくんだった。

手足が冷えたので、逃げるように湯船に浸かる。長湯して具合が悪くなる。一回休み。また、一回休み。ルーレットを回すときはまだ来ない。

 

たぶん、寒いのと疲労が悪い。そういうことにしてくれないか。私がここから動けないのを、手を引いてもう次へ行こうと連れ出そうとしないで。手を引こうとしてくれるあなたのせいではないけれど、本当はその手を取ってしまうのがシンプルだと知っているけれど、だからどんなに私を大切に思ってのことかもわかるけれど、だから、より一層苦しい時もある。私は、どの花でもよかったんじゃない。別の星にいけばありふれた花でも、あの子がガラスの覆いをかけたのはあのバラだけ。もうきっと朽ちた、いいことばかりではなかったあの赤い花。

 

先週会社の人たちと飲んだあとベロベロになった後輩の女の子を家まで送り届けてしっかりと終電を逃し、当初そのつもりだった通りタクシーで帰ればいいのに、表通りまで歩いて出てみたらそのままなんか興が乗って知らない道を14キロ歩いて帰った。モバイルバッテリーも持っていなかったので、残り42%の充電で帰るまでGoogleマップが持たなかったらゲームオーバーだったのに。なんとか間に合ったけど。楽しいが、同じくらい怖かった。こんなとき、実際それをとってくれるかはおいといて、真夜中の知らん住宅街怖いからとりあえず電話しちゃえ、で連絡して声を聞こうと思える相手は、まだ欲しいかもしれない。(私に甘すぎる友人らはきっと応えてくれるだろうけど)それは友達にはできない、絶対に過剰に心配させるので。そもそも短距離だとしても深夜に女の一人歩きをするな。無事に帰れてよかったよ。左足の親指の爪が剥がれかけたくらいは、無傷も無傷だろう。無事に帰れるか怖かったということは、何もかもどうなってもいいとは思っていないということだ。それはまあ、わかれてよかった。

あと、割と都心の方から歩いてきたはずなのに道中コンビニがぜんぜんなくて心細かった。やっと見つけたお水買お〜と近づいたら閉まってたりした。ゾンビ映画だったらここで頭かち割られてる。現実でもそうかも。くらーい住宅街のほそーい道を流れるほそーい川の水音を聴きながら大ビビりしてるとこで向かいから人が来た時は終わりだと思った。ふつうに近隣住民ぽかった。実際不審者なのはこっちだし、ほんとに二度とやらない方がいい。次はたぶんアッサリ酷い目に遭う。ていうか、方向音痴だし。方向音痴だからどこにでもいける。どこにつながっているかなんて知らないから。