いもいもなにいも

おいものなんでもない日

窓と黒猫

 

ときどき、夜に一駅ぶん歩くことがある。私は方向音痴なのでそのとき自分が一体どのあたりを歩いているかは全くわかっていないんだけど、閑静な住宅街を歩くのは楽しい。表通りより裏通りの方が好きだ。うるさくないし、すこし距離が長い。

 

その裏通りの、薬局らしき建物のショーウィンドウ(?)の中で黒猫が籐籠に入って眠っている場所がある。最初に見たときはすごくびっくりした(ぬいぐるみかと思ったらおなかがゆっくり上下していてハッとした)。名物猫なのかなと思って何回か検索してみたけど、ネットには同じ猫の情報はなかった。

ますますその道が好きになった。

 

街灯を反射してすこし光っている川、歩道橋の上からしか見えないアパートの庭(電車の車両っぽいものがある)、ショーウィンドウで眠る黒猫、律儀に内容の変わる掲示板、白や赤のいばらに包まれた民家。

夜だから立ち止まって見ることができる。

 

一緒に歩いてる人からしたら見慣れたご近所なのかもしれないし、激務中の激務を縫って時間をくれている人間を付き合わせるにはあまりに子供じみているとは思うんだけど、その時間がすごく好きなのでついついわがままを言ってしまう。

夜の散歩は特にいい。夢と地続きみたいだから。

 

もう少し暑くなったら、途中のコンビニで買ったパピコ吸いながら気だるく歩こう。