いもいもなにいも

おいものなんでもない日

靴のなかの小石

・満開の桜が見たい見たいと思っていたのに、疲れが出たのか何の予定もない今日みたいな日に外に出れない精神状態となってしまい、盛りだけを見逃した。無理矢理着替えて外に出ればちょっと歩いたところの川沿いに咲いているのはわかっていたけど、そこにいるのは桜だけじゃなく、近所の老若男女も集っているだろう。今日は他人の気配や視線を実際の500倍くらいに感じそうなので、やめた。この判断ができるようになっているだけマシだ。まあ、花はまた咲く。

 

・3月は社会人になってからいちばん残業した。が、時間的には忙しかったものの、いちばん辛かったのはやはり断然前職2年目の秋冬だったなとも思うので、「退勤したら仕事にかかわる連絡がない」という環境がいかに大切かよくわかった。いつもなら風邪のひとつもひくところ、今回は気配すらなかったし。ピルを変えたばかりで余計に体に負担がかかっており、不正出血があったり月経(消退出血)の量と痛みがエグかったりと、異常がないわけでもなく、かなり疲れたは疲れたので、今日みたいな日にガクッと心がつまずいて頭を暗雲がつつみこんだりはするが。「このクレーム対応が終わったらごはん行きましょうよ!」と誘われたのをのらりくらりかわしてこのまま消滅させたいので、誘ってきた人と会社でかちあわないようにしている。嫌いとか苦手とかじゃない。職場の人間関係にグラデーションをつけたくない。それをみて「絡んでいい人なんだ」と判断した第三者のなかに、過去悩まされてきたタイプがいないとも限らない。あとまあ、異性なので、火のないところに煙を立てられるのも嫌。そもそも、「仲良くなるための食事」が、生まれてこのかたずっと苦手。

 

・おまえは"そう"だから友人が少ない、友人と頻繁に会ったり会話したりしないから関係が希薄なのだと指摘されることが最近ちょこちょこあるが、お互いの価値観が違うのでお互いに望む議論にならず、最初はスルーしていたが、重なるとやはりこうだと責められているようなかたちになるのが不快にさえなり、すこし悩む。この悩みをすこし分解したい。いや、まず相手も私の「友達が知らないあいだに〇〇になっていてびっくりした、ちょっと寂しかった」みたいな話を聞いて、解決すべきイシューのとして捉えてくれている節があるので、そもそも私が感想として「寂しい」とか言わなきゃいいのかもしれない。一時的に思うだけでほんとはそんな気にしてないのに(だって結果的に知らされているのだから、知らせてもいいとは思われているのだ)。気をつけよう。

 

・"いつ、どこまでの人に言うのか"みたいなのって、言う側も難しいよな。受験とかみたいに時期決まってないし。ひとりひとりお互いのリズムも違うし。言ったら言ったで興味なさそうにされたり期待通りのリアクションがなかったらかなしいなとも思うだろうし。で、私は一握りの人間にしかセンシティブな近況を開示していない(面白い話だと思ってないし背景事項がいろいろ多すぎるため、その共有のためにやっと会える相手との時間を食いたくないから)(相手の話をいっぱい聞くのはぜんぜんいい)(訊かれたら答える)ので、相手からは様子みられてそのまま…みたいなのは、まあ容易に想像がつく。それを疎遠と、冒頭の相手は呼ぶのかもしれない。それなら確かに、「私のせい」になるな。

 

・「助けてほしい」と声をあげたらお互い必ず力を尽くす、尽くしたいと思ってくれるとわかっている人間が何人かいてくれたら、それで十分だと思っている。それってかなりすごいことだと思うし。ていうか、アラサーの「仲がいい友達」の証拠ってなんだろう。仕事/恋愛の動向や結婚/引越し報告等をすぐに受けること?むしろ恋人よりも優先して思い出を作ること?たくさん会話をすること?お互いの近況をなんでも知っていること?それが少ない私は、友達が少なくて、そして不幸や惨めだということ?そうだと答える人もいるだろうな。私が友達だと思っているひとたちのなかに、「アイツ付き合い悪いし後回しでいいや」と思ってる人もまあ、いるだろう。それはちょっと寂しいし申し訳なくも思うけど……、それが結果的にお互い負担にはならない距離感の交流を支えてくれているのだとしたら、それはそれで別にいいというか、仕方ない。

 

・だとしても、いい年して友達の「数」で一喜一憂するのはバカげてるよな。それだけはそう。私は友達を「足りない」と思ったことはない。それだけはなんか、悪いことのように言われるのは違うので、もし同じような展開になったらそれを伝えてやめてもらったほうがよいな。伝わっていない(で、そこを不満に思っていると思われている)のがまずは原因なので。これからひとりも新しい友達ができなくても、死ぬまでに「足りない」と思うことはたぶんない。だれもいなくなったら別だけど、その時ってきっと私の人間性がめちゃくちゃヤバくなった時ので、もはや友情の維持とか以前の問題だしな。強めに殴って。でもできればその前に適切な医療に接続させて。だけど、あなたが傷つく前には立ち去って。

 

・おそらく、相手と"恋人(パートナー)""友人"について(他の関係性については我々のあいだに適切に対比できる材料がないので置いておく)の価値観がほぼ真逆だから、↑みたいなことになる。私は「頻繁な交流があろうとなかろうと、縁を切りさえしなければ友達はずっと友達」「後回しでいいなら恋人の意味を為さない」と思っているが、相手はたぶん、「恋人は恋人として確立されているのだからそれで充足されていて、それ以上を求めるときりがない」と思っていて、一方で「友達はある程度放っておくと他人になって、"足りなくなって"しまう」と思っているのだろう。だから「私が友達でいる努力を怠るからそうなるのだ」と言いたくなるのだ。私たちはこんなに違う。どちらがいいとか悪いとかではなく。懲りずにまたこの歪んだ窓ガラス越しに似たような会話をして、見えているものが違うなあと眉間に皺を寄せるだろう。この違いがわたしたちをどこに運ぶのかは、まだ考えないようにしている。また違うね、ぶつかっちゃったねと、ずっと面白がっていられるならいいのにね。

 

・にんげんってなんぎ。おいしいごはんとぽかぽかおふろとあったかふとんでは、もはや満足していられない。